ブロードウェイ&ショー

スリープノーモアに行った感想「意味不明だった」という人へ。



(ネタバレではありません!)

スリープノーモア、話題になっているから行ってみたけど、意味わからないんだろうな、と思って行ったけれど、本当に意味が分からなかったよ。

…という人へ。

安心してください。わたし(筆者)も初回はそうでした!

スリープノーモアが理解できなかった件

これは、わたしが初めてスリープノーモアに行った時の話です。

舞台が全て終了し、部屋から追い出されて一息ついた後、ふと口から出た一言。

…全然意味が分からなかった。

ボーっと立ち尽くし、今さっきまでいた世界、そして見たものについて思いを巡らせ、脳みそフル回転で理解に励むも…やっぱりわからない。涙

「スリープノーモアって、どこがいいの?何が楽しいの?全然理解できないんですけど!」と、軽いパニック状態に。

チケット、100ドルもしたのに…ただただ意味わからなかったなあ…物語も付いて行けなかったし。

なんて、少し落ち込みながら一緒に来た(そしてはぐれた)弟を待ってると、高揚した様子で弟が出口から現れ、わたしを見つけ開口一番、

最っっ高だった!!!」と叫びました。

…え?なんで?

何、この感動の差…?

体験を「シェア」することで後から感じられる感動

その後、弟と数時間かけて「この経験は一体何だったのか」について話しました。

そして、話していくうちに、なんだかわたしが体験したスリープノーモアでの体験がとても特別で、忘れられないほどにインパクトのあるものだと、だんだん確認できました。

わたしは、「このような難解な舞台を”良かった”と評価できない自分は、もしかしてレベルが低いのか?」と、自分に対して妙な心配していたのですが、無事その心配も払拭できました。

弟とわたしの「体験の違い」

弟とわたしの体験の違いは、ひとえに「見たシーンの違い」から来るものでした。

スリープノーモアは、6階立ての廃ホテルを舞台に、ほぼ全ての階で25人余りの登場人物がそれぞれ演技を同時進行しています。

なので、わたしが5階でウロウロしている間に、弟は2階で何か重要なシーンを見ていたりと、同時に会場内にいても、まったく異なるシーンを見ているのです。

そんなわけで、二人の見たものをまとめると、

  • 弟は、物語が理解できるメジャーコース
  • わたしは、物語には関係のないマイナーコース

を進んでいたことがわかったのです!

メジャーコースとマイナーコースの違い

1.メジャーコース

弟は、早々に主人公である「マクベス」役の男性を見つけ、ずっと追いかけていたようでした。

スリープノーモアは、セリフはなく、動きと表情などの「外見の演技」だけで見せる舞台なので、英語がわからなくても主人公のとる行動は理解できます。

弟は、物語を「主人公目線で」追っていくことができたので、「映画通り(=主人公メイン)」にすすむ物語を理解できたわけです。

2.マイナーコース

それに対してわたしは、最初からものすごい「脇役」に付いていっていました。

その脇役は、映画の中では数分間しか出てこないくらいの登場人物なのですが、このスリープノーモアの世界ではずっと存在していて、常に何かしらの行動をしています。

その行動は、映画の中では決して写し出されないような、とても些細な場面です。「カメラの裏側」という感じでしょうか。

わたしは、その役の人が一人歩きまわったり、ダンスをしたり、突然狂ったり、真剣に物思いにふけっている様子を、数10分にわたって付きまとい、ただ眺めていました。

結局、わたしは最後まで主人公が誰なのかもよくわからないまま、脇役巡りをしていたわけです(笑)

どちらにも違う楽しみ方がある!

しかし、マイナーコースを進んだからといって「損な楽しみ方をした」ということにはなりません。

例えば、わたしが見たり体験したシーンの中には、「limited sene(限定シーン)」がたくさんありました。

それは、一度に1人しか入れない部屋に偶然入ってしまったり、10人しか見られないシーンのことです。

ある役者さんには、1対1で鍵のかかった部屋に連れていかれ、数分間話を聞かされることもありました。

これは、マイナーな方ばかり彷徨っていたからこそ出会えた、とても珍しいシーンだったのです。

メジャーなシーン巡りをしていた弟は、このような限定シーンには出会わなかったそうで、とても羨ましがられました。わたしはわたしで、「主人公にも付いていきたかった~~!」と弟を羨ましく思っていたわけですが…。

初回の自分の体験は「運」

「じゃあ自分は、物語がわかる主人公コースで行こう!」と思う人もいるかもしれませんが、初回で自分の思い通りに動くのはほぼ不可能です。

なぜなら初回は、

  • 会場のつくり(どこに何があるのか)
  • 主人公のいる階と場所
  • 各役者はどんな格好をしているのか
  • Sleep No More内での物語の流れ

この何もかもがわからないからです。

ちなみに、名札がついているわけでもないので、偶然主人公に出会ったとしてもそれが誰なのかすらもわかりません。ずっとその役者に付いていって、行動を見て、やっと「この人は、あの役だ」と確信が持てるのです。

なので、初回に体験するシーンは完全に「運」に委ねられることになります。(笑)

Sleep No Moreは、観客の期待を裏切る

また、私が混乱した第一の原因に、「思っていたものと全く違ったから」というのがあります。

とにかく終わった直後は、「スリープノーモアに対して自分が抱いていた期待をすべて裏切られた」ような気分でした。

「期待を裏切る」というと、なんだか語弊があるような気がしますが…

簡単に言えば、

  1. 「会場では、こんなものが見られるだろう」
  2. 「行けばストーリー内容も理解できるだろう」
  3. 「行けばNYでこんなにも高く評価されている意味も、わかるだろう」

という、わたしがスリープノーモアに対して勝手に抱いていた3大期待が全て裏切られたのです。

会場で見たものは謎に包まれ、ストーリーにも全くついて行けず、結局評価された意味もないまま…。

それで、完全に混乱してしまいました。

今までのブロードウェイでは、物語の予習をして行けば絶対に理解できて、大満足で帰ることができました。

わたしはこの時も、スリープノーモアのベースになっている2つのストーリー、シェイクスピアの『マクベス』と、『レベッカ』のあらすじを頭に入れて来ていました。

それでもわからないなんて、正直意味が分からない。って感じです(笑)

スリープノーモアでは、見に行く前に「こんなものが見られるんだろうな♪ワクワク♪」と想像しているものは、基本的に裏切られます。

いい意味でも悪い意味でも、とにかく全く想像し得なかったものに遭遇する、まさに、未知との遭遇に溢れた舞台なのです。

 

「最高」と「最低」に分かれるレビュー

実は、スリープノーモアの感想は、人によってかなり極端に分かれます。

わたしの場合は、後からジワジワと感動が押し寄せ、星をつけるなら4つは付けられるな、という位にまではなりました。(わたしがマイナーコースを進んでいた、ということが理解できたため。)

しかし、もし会場から出た直後にレビューを付けろと言われていたら、おそらく1、良くて2を付けていたと思います。

それくらい、圧倒的に意味が分からなかった=良い評価ができない、と思ったからです。

「わからない」という感想は、悪い評価の理由にはなれど、良い評価の理由には、普通はなりません。

レビューサイトでスリープノーモアの口コミを確認すると、星5つ=最高!が多いのですが、星1つの人も。

星1つ派の意見の多くが、「理解しにくかった」「何が起こっているのか結局最後までわからなかった」、というものでした。

人は、理解したもの・わかりやすいものしか評価できない

人は、自分が「きちんと理解できた」と思ったものしか評価できません。

わからないものを具体的な数字で評価するのは、不可能だからです。

「理解したものしか良いと思えない」という人にとっては、もしかしたら「最悪の舞台」になるかもしれません。

しかし、スリープノーモアの最大の魅力は、何度行っても完全に理解することは不可能である、という点にあります。

わたしも、最初こそ「わからない=良くない」と短絡的に解釈・評価していましたが、スリープノーモアに何度も行く中で、「わからない、でも、だからこそ面白い」と思えるようになりました。

というよりも、だんだん、未知すぎるこの舞台を解明していくのが面白う、ハマってしまうのです。

リピーターの数が異常&異例な舞台

「わからない」と、何が起こるのか?

「わからない」部分を解明しようと、リピーターが訪れます。

わたしも、弟の見たシーンを見てみたい!理解したい!という思いで、2回目に挑みました。

同じように、スリープノーモアのリピーターになる人は、星の数ほどいます。10回以上、という人もざらです。

結局、数回では理解できない部分・見られないシーンが多すぎるからです。

スリープノーモアのウィキペディアによると、なんと100回以上行った強者もいるそうです。

100回行っても飽きない…それはつまり、「100回行ってもわからないことがある」、ということです。

2回目からが、本当に楽しめる

もし、今回あなたがスリープノーモアに行って、「あ~意味わからなかった~!!」と思っているのであれば、ぜひ、情報を徹底的に集めてから「自分の見ていないシーン」を狙ってもう一度行ってみてください。

一回目は、「ネタバレしてしまうといけないから、なるべく情報は見ないで行こう」と思って行ったかもしれません。

しかし、一度行ってわかったと思うのですが、結局ネタバレなんて取るに足らないものであって、いくら徹底的にリサーチした上で行ったとしても、結局見れないシーンはたくさんあります。

情報収集(&ネタバレ) ≠ 体験からの理解 です。

実際に体験しないと、そのシーンを本当に観たとは言えません。

目の前で役者の泊真の演技を見て、感動し、そして初めて舞台を「理解」できるのです。

しかし、わからない部分は絶対に残ります。「完全理解」は不可能です。

だって、「100回行った人」でもわからないんだから…。

この人、絶対に誰よりも情報集めしてますからね…。

しかし、「わからない」という感想だけではリピーターの原動力にはなりません。

やはり、スリープノーモアに、何にも替えがたい「魅力」と「面白さ」があるからこそ、みんな一回100ドルを払ってでも「もう一度行きたい!」と思うのです。

2回目は、1回目よりもずっと楽しめます。

これは、保障します!

また今度は、「2回目行く人のためのスリープノーモア情報」の記事を書こうと思います。

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